【日本株】勢い増す株式分割、投資家が押さえておきたい動向と注目銘柄 鈴木一之、次のトレンド銘柄を探る! マネクリ マネックス証券の投資情報とお金に役立つメディア

【日本株】勢い増す株式分割、投資家が押さえておきたい動向と注目銘柄   鈴木一之、次のトレンド銘柄を探る!   マネクリ マネックス証券の投資情報とお金に役立つメディア

上場企業が株式分割を行う理由と、投資家にとってのメリット。相次ぐ株式分割、2024年の動向と2023年の振り返り。今後の株式分割が期待される注目銘柄3選 鈴木一之、次のトレンド銘柄を探る! 2024/03/08印刷アンケート

今回は「株式分割」について解説しましょう。まず、企業は会社法183条1項の規定によって、株式を分割することができます。

【会社法183条1項】 「株式会社は、株式の分割をすることができる。」

「株式を分割する」とは、例えば1株を2株に増やすことです。整数倍でなくてもかまいません。1株を1.5株に分割することも可能です。取締役会を置いている企業の場合、株式分割は取締役会の決議で行うことができます。

上場企業が株式分割を行う理由は様々です。ストックオプション交付のためや、IPO直前の売出価格調整のため、株式配当のためなどがありますが、実際には1回の株式取引に際しての投資金額を下げるために実施されることがほとんどです。

例として、1株を2株に分割するケースで説明します。

株価が@1,000円の企業が「1株→2株」の株式分割を行うと、株価は1/2の@500円になり、その分持ち株数が増えます。この例では、従来からの株主が保有する株式数は100株から200株へと2倍になります。

したがって、株式分割の前と後で、従来からの株主が保有する株式の価値は変わりません。

分割前:@1,000円×100株=100,000円 分割後:@500円×200株=100,000円

しかし、これから株主になろうとする未来の投資家にとって、株式分割は大きな意味があります。分割する前に必要な投資金額は、最も小さな投資単位の100株で10万円が必要でした(@1,000円×100株=100,000円)。それが分割後には5万円に下がります(@500円×100株=50,000円)。

新たに投資を行おうと考える投資家にとって、最低投資金額が下がり、その分だけ投資に対する心理的、金銭的なハードルが下がることになります。これは投資家にとって何よりの朗報です。

新たな投資家層を呼び込む期待が生じるという意味で、株式分割を発表した直後に株価が急上昇するケースが多いのも、このあたりに理由があると考えられます。

相次ぐ株式分割、2024年の動向と2023年の振り返り

東京証券取引所は、個人投資家が株式投資を行いやすい環境を整えるために、「望ましい投資単位」として「50万円未満」という水準を示しています。

近年は最低売買単位が100株にほぼ均一化されましたので、「50万円未満」という水準は、株価に換算すると@5,000円未満となります(@5,000円×100株=500,000円)。

東証は株価水準を明確には規定していませんが、この50万円(@5,000円)という水準を超えて売買されている上場企業に対して、年度末から3ヶ月以内に、最低投資金額を50万円未満の水準にするための「投資単位の引き下げに関する考え方」を開示するように義務付けています。

実際に東証は1990年から、すでにこのような「投資単位の引き下げ」に関する要請を上場企業に対して働きかけています。その当時、上場企業の80%近くの企業で最低売買金額は100万円を上回っていました。

その後のバブル崩壊による趨勢的な株価下落と、最低投資単位の引き下げ(1,000株→100株)、上場企業サイドが行う株式分割によって、投資金額が50万円未満に下がった企業数は、今では上場企業の93%にまで高まりました(2023年9月末現在)。

それでも50万円を越える企業はまだ240社もあり、全体の6.3%に及んでいます。しかも、200万円を越える「超値がさ株」が12社ほど存在しています。

「超値がさ株」の顔ぶれは、キーエンス(6861)、ファーストリテイリング(9983)、SMC(6273)、東京エレクトロン(8035)、ディスコ(6146)など、いずれも現在の日本経済を代表し、世界中から投資資金を引き寄せる高成長企業になります。

東証は、個人投資家が投資しやすい環境を作るために、2022年10月にも「投資単位の引下げに係るご検討のお願い」と題した要請を、最低投資金額が高い水準にある上場会社に向けて出しています。

その効果もあってか、2024年3月末を基準に株式分割を行う企業が相次いでいます。過去に例のないほど多数の数にのぼっており、その主な企業は以下になります。

2024年3月末に株式分割を実施する主な企業(順不同)

【1株→2株】 住友ベークライト(4203) テルモ(4543) 大塚商会(4768) 共立メンテナンス(9616)

【1株→3株】 SOMPOホールディングス(8630) MS & ADインシュアランスグループホールディングス(8725) サンリオ(8136) 川田テクノロジーズ(3443) シスメックス(6869) 富士フイルムホールディングス(4901) 日油(4403) 川崎汽船(9107) 東テク(9960) 東日本旅客鉄道(9020)

【1株→4株】 野村マイクロ・サイエンス(6254) 黒崎播磨(5352)

【1株→5株】 東映(9605) 東映アニメーション(4816)

【1株→10株】 三菱重工業(7011) 富士通(6702)

これだけ多くの上場企業が一度に株式分割を実施するのは実に珍しいことです。また、2023年はかなりの企業が株式分割を実施しました。代表例は以下のとおりです。

2023年に株式分割を実施した主な企業(順不同)

ファーストリテイリング(9983)1株→3株(分割効力発生日:2023年3月) オリエンタルランド(4661)1株→5株(2023年4月) 信越化学工業(4063)1株→5株(2023年4月) ダイフク(6383)1株→3株(2023年4月) ファナック(6954)1株→5株(2023年4月) 東京エレクトロン(8035)1株→3株(2023年4月) ディスコ(6146)1株→3株(2023年4月)

2024年1月から新しい「NISA制度」がスタートし、「成長投資枠」として1年間に240万円まで、投資信託の他に上場株式にも非課税で投資できる枠が設けられました。その枠内に最低投資金額が収まるように、企業サイドも率先して株式分割を行ったのかもしれません。

それでも東京エレクトロンのように、過去に大胆な株式分割を行っても、そこからさらに株価が上昇して、せっかく分割を実施しても、再び最低投資金額が50万円を越えてハネ上がってしまうというケースも見られます。上記の企業の多くがそうです。

こうなると、まさに高成長企業だけが抱える「うれしい悲鳴」と言えるでしょう。成長企業であるがゆえに、成長に見合って株価が上昇する→最低投資金額が膨れ上がる→株式分割が求められる→分割を実施する→投資資金が流入しやすくなる→成長が続き株価が上昇する、という好循環が続きます。

個人投資家の視点からすれば、株式投資のハードルが低いほど経済的、心理的に助かります。株式投資に要する投資金額は可能な限り、低く抑えられていてほしいものです。

今後の株式分割が期待される注目銘柄3選

ここから、今後の株式分割が期待される企業を紹介します(株価は全て2024年3月6日現在)。

SMC(6273)

@90,980円(最低投資金額:約910万円)

空気圧を動力とした工場における自動制御機器の世界トップ企業。あらゆる産業分野で工場のオートメーション化に取り組むクライアントに向けて、世界80ヶ国以上、500を超える製造・営業拠点から2万人の従業員が70万品目にも及ぶ製品を送り出している。自動化、省力化、省エネルギー化はこの企業を除いて構築することはできない。過去30年間で株価は50倍にもなっているが、この間一度も株式分割を実施したことがない。待望の分割実施が待たれる筆頭格である。

【図表1】SMC(6473)の週足チャート出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年3月8日時点) ### ディスコ(6146)

@52,350円(最低投資金額:約525万円)

半導体ウエハーのダイシングソー(切断装置)で世界シェア7割強を有するトップ企業。他にもウエハー研削装置、研磨装置で高いシェアを有する。半導体ウエハーを切断しチップ化する工程では、最初に極細のレーザーで微細な配線層を除去し、その後に基板を極薄ブレードで切断する手法を開発。切断面に接触しないため、負荷が少なく摩耗熱によるチップへのダメージも小さい。他の追随を許さず世界トップを独走する。2023年4月に1株→3株の分割を20数年ぶりに実施したが、すぐに株価は5万円台まで上昇してしまった。早くも次の分割が待たれる。

【図表2】ディスコ(6146)の週足チャート出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年3月8日時点) ### ニトリホールディングス(9843)

@23,645円(最低投資金額:約240万円)

「安さ」「品質」「コーディネイト」の3つの視点で「お、ねだん以上。」の価値を提供する。家具チェーンからスタートしたが、今や家具にとどまらず国民の生活全般に浸透する「製造物流IT小売企業」となった。商品の開発から原材料の開発、製造、販売、物流配送、ITシステムまで自社で一貫して手がけている。35期連続の増収、18期連続で増配を実施。ニトリメンバーズ会員は4500万人に達し、就職人気ランキングも第1位を獲得する。株式分割は2014年2月に1株→2株を実施したのを最後に、この10年間は行っていない。次なる分割が待たれる。

【図表3】ニトリホールディングス(9843)の週足チャート出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年3月8日時点) 参考文献:東京証券取引所・Webサイト https://www.jpx.co.jp/equities/listing/company-split/index.html

投資金額10万円以下の株主優待人気ランキング一覧!

本サイトでは関連記事のみを収集しております。株主優待 おすすめ 10万円以下原文を閲覧するには、以下のリンクをコピーして開いてください。