貯蓄から投資へ ~2024年はお金にもっと働いてもらいましょう! | 税務トピックス| 辻・本郷 税理士法人
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2022年以降、円安物価高の傾向が続いており家計に与える影響を身近に感じている方も多いでしょう。かつて国際的に日本円の価値が右肩上がりだった頃とは違い、いまや現金や預貯金だけで資産を形成していることはそれだけで自身の資産価値を目減りさせてしまっている可能性があります。2024年からの資産の増やし方についてご案内します。
2022年以降、円安物価高の傾向が続いており家計に与える影響を身近に感じている方も多いでしょう。かつて国際的に日本円の価値が右肩上がりだった頃とは違い、いまや現金や預貯金だけで資産を形成していることはそれだけで自身の資産価値を目減りさせてしまっている可能性があります。2024年からの資産の増やし方についてご案内します。
- 所得税
2024年01月10日 連日のニュースでも取り上げられていますが、円安、物価高の傾向は続いており、家計に与える影響を身近に感じる機会が増えました。
この円安・物価高の傾向がどこまで続くかはわかりませんが、昔のように、預貯金の利息による恩恵も大きく、国際的にみても日本円の価値が右肩上がりだった時代とは違い、今や現金や預貯金だけで資産を形成していることはそれだけで自身の資産価値を目減りさせてしまっている可能性があります。
今回は「貯蓄から投資へ」をテーマに、今年2024年からの資産の増やし方についてご案内します。
現金の資産価値は減っている?
総務省統計局によれば、消費者物価指数は2020年を基準の100とした場合、2023年10月は107.1と、この3年間で7.1%も上昇しているようです(2023年11月24日公表)。つまり、2020年には100万円で購入できたものが、2023年には107万円支払わないと購入できないということになります。
逆に考えてみましょう。皆さんの手もとにある現金の価値はどうなっているのでしょうか。
お財布の中にある1万円札は、2020年当時も2023年時点でも同じ1万円の価値しかありません。しかしながら、この同じ1万円で購入できる物の価値は下がっているのです。つまり、現金で所有している資産の価値はこの3年間で確実に目減りしていると考えられます。
出典:総務省統計局 2022(令和4年)平均消費者物価指数の動向
これに対して、わかりやすい例を挙げると、金(地金)は価格が変動します。現金でなく、金の延べ棒で資産を所有していた場合、この5年間で見ると、確実に資産価値は上昇しています。
出典:田中貴金属工業株式会社「過去5年間 月次金価格推移」
貯蓄から投資へ 2001年以降のあゆみ
物価の上昇に伴って給料も上がればよいのですが、物価は上がっているのに給料はまだ上がらないと感じている方も多いのではないでしょうか。また、ご自身の資産をすべて現金で所有している方は少ないと思いますが、資産のほとんどを預貯金口座に眠らせているという方は比較的多いと感じます。
「貯蓄から投資へ」近年、我が国でも定着しつつあるこの方針ですが、日本政府で初めて明確に打ち出されたのは小泉政権(2001年発足)でした。
当時、税制もこれにあわせて証券優遇税制がスタートし、株式等の売却益にかかる所得税等は10%程に抑えられていましたが、2013年末にこの特例措置は廃止され終わりを迎えます。2014年以降は20%程の本則税率に戻されると同時に、(旧)NISA制度が始まりました。当時のNISA制度は「少額の投資を期間限定で」という条件の下、非課税で運用できるというものでした。
2024年、新NISA制度が開始
そして、いよいよ2024年からはこのNISA制度が抜本的に新しくなりました。非課税で投資することのできる枠が大幅に拡大され、運用できる期間も無期限となったのです。
先ほどの例のように、現金を金(地金)に変えて資産を運用する方法もありますが、株式や投資信託への投資であれば、この新NISA制度を活用することができ、税制面での恩恵が受けられます。
個人の株式運用益等に対する課税関係
まずは、NISA制度を活用せずに株式を運用する場合の原則的な課税関係を確認してみましょう。
(1)売却したとき
株式等を売却した際に利益が出ていると、その利益に所得税と住民税がかかります。具体的には以下のような計算方法となります。
総収入金額(売却時の金額)-必要経費(購入時の金額+手数料等)=譲渡所得等(利益)譲渡所得等(利益)×20%(所得税15%、住民税5%)※=税金
※この他に復興特別所得税がかかります
株式等の売却益に対する税金は所得税法上の分離課税に該当し、他の所得と合算して税金を計算する仕組み(総合課税)の計算対象にはなりません。
証券会社の特定口座の源泉徴収有の口座で株式等を保有している場合には、これらの税金は源泉徴収され、税引き後の残額を受け取ることができる仕組みとなっています。これに対し、一般口座で保有している株式等の運用益については、確定申告が必要となります。
(2)配当金を受け取ったとき
配当金を受取った際にも、税金はかかります。配当金を受け取った時には、以下の計算によって所得税等が源泉徴収されます。
①上場株式等の配当の場合
配当の金額×20%(所得税15%、住民税5%)※=税金
②非上場株式等の配当の場合
配当の金額×20%(所得税のみ)※=税金
※この他に復興特別所得税がかかります
①については確定申告不要制度を選択することができます。また、確定申告する場合にも総合課税(配当控除の適用可)または申告分離課税のどちらかを選択することができます。いずれも納税者の判断により選択が可能です(一部の大口株主等に対するものを除く)。
②については原則として総合課税の対象となります。ただし、少額の配当(年換算10万円以下)については確定申告不要制度を選択することができます。
使いやすくなった新NISA制度活用のすすめ
先ほど確認したように、株式等の運用によって利益を得た場合、その利益には所得税等が課税されます。 しかし、NISA制度を活用すればこの非課税口座内で保有する株式等については、売却時の利益や配当金の受取りに課税されることなく非課税で利益を受け取ることができます。
新しくなったNISA制度は、年間投資枠、保有期間、保有限度額等が大幅に拡大され、一段と使いやすい制度となりました。新NISA制度の概要は以下の表のとおりです。
出典:金融庁「新しいNISAのポイント」
つみたて投資枠は旧制度のつみたてNISAに該当し、投資信託を積立で買付できます。長期的にコツコツと積み立て、投資対象を分散しながら、安定した運用を目指します。
これに対し、成長投資枠は旧制度の一般NISAに該当し、投資信託のほか、株式等の買付も可能です。幅広い商品への投資が可能で自由度が高いのがこちらの特徴です。 どちらも、18歳以上の国内居住者であれば制度の対象となります。
NISA口座は一人に対して、一つの金融機関で口座開設が可能です。年単位で金融機関を変更することは可能です。利用者それぞれの非課税保有限度額については、国税庁で一括管理されていますので、ご安心ください。
以前の制度では非課税保有期間に限度があったため、長期投資には向いていないなどの批判もありましたが、新しい制度では口座開設期間が恒久化され、長期での運用も可能になりました。ぜひ、早めに投資を開始して、できるだけ長い期間での運用を検討されることをお勧めします。
おわりに
自身が働いて給料等を稼ぐだけでなく、そこから生み出されるお金にも働いてもらうことで、資産価値を高める方法を真剣に考えなくてはいけない時代がすでに到来していると感じます。
もちろん投資にはリスクも伴います。しかし、投資はギャンブルとは異なり、例えば株式であれば、投資された企業にも投資した投資家にも利益をもたらす可能性があり、生産性のある比較的期待値の高いお金の使い方とも言えます。
2024年1月から始まったばかりの新NISA制度を活用すれば、税制の恩恵も受けられます。これまで投資とは無縁だったという方も、チャレンジしてみる絶好の機会ではないでしょうか。
ご不安や判断に迷うなどお困りの事がございましたら、私たち辻・本郷 税理士法人までお問い合わせください。
執筆担当:大宮事務所 高木 真弓参考サイト【金融庁】「新しいNISA」
総務省統計局によれば、消費者物価指数は2020年を基準の100とした場合、2023年10月は107.1と、この3年間で7.1%も上昇しているようです(2023年11月24日公表)。つまり、2020年には100万円で購入できたものが、2023年には107万円支払わないと購入できないということになります。
逆に考えてみましょう。皆さんの手もとにある現金の価値はどうなっているのでしょうか。
お財布の中にある1万円札は、2020年当時も2023年時点でも同じ1万円の価値しかありません。しかしながら、この同じ1万円で購入できる物の価値は下がっているのです。つまり、現金で所有している資産の価値はこの3年間で確実に目減りしていると考えられます。
出典:総務省統計局 2022(令和4年)平均消費者物価指数の動向
これに対して、わかりやすい例を挙げると、金(地金)は価格が変動します。現金でなく、金の延べ棒で資産を所有していた場合、この5年間で見ると、確実に資産価値は上昇しています。
出典:田中貴金属工業株式会社「過去5年間 月次金価格推移」
貯蓄から投資へ 2001年以降のあゆみ
物価の上昇に伴って給料も上がればよいのですが、物価は上がっているのに給料はまだ上がらないと感じている方も多いのではないでしょうか。また、ご自身の資産をすべて現金で所有している方は少ないと思いますが、資産のほとんどを預貯金口座に眠らせているという方は比較的多いと感じます。
「貯蓄から投資へ」近年、我が国でも定着しつつあるこの方針ですが、日本政府で初めて明確に打ち出されたのは小泉政権(2001年発足)でした。
当時、税制もこれにあわせて証券優遇税制がスタートし、株式等の売却益にかかる所得税等は10%程に抑えられていましたが、2013年末にこの特例措置は廃止され終わりを迎えます。2014年以降は20%程の本則税率に戻されると同時に、(旧)NISA制度が始まりました。当時のNISA制度は「少額の投資を期間限定で」という条件の下、非課税で運用できるというものでした。
2024年、新NISA制度が開始
そして、いよいよ2024年からはこのNISA制度が抜本的に新しくなりました。非課税で投資することのできる枠が大幅に拡大され、運用できる期間も無期限となったのです。
先ほどの例のように、現金を金(地金)に変えて資産を運用する方法もありますが、株式や投資信託への投資であれば、この新NISA制度を活用することができ、税制面での恩恵が受けられます。
個人の株式運用益等に対する課税関係
まずは、NISA制度を活用せずに株式を運用する場合の原則的な課税関係を確認してみましょう。
(1)売却したとき
株式等を売却した際に利益が出ていると、その利益に所得税と住民税がかかります。具体的には以下のような計算方法となります。
総収入金額(売却時の金額)-必要経費(購入時の金額+手数料等)=譲渡所得等(利益)譲渡所得等(利益)×20%(所得税15%、住民税5%)※=税金
※この他に復興特別所得税がかかります
株式等の売却益に対する税金は所得税法上の分離課税に該当し、他の所得と合算して税金を計算する仕組み(総合課税)の計算対象にはなりません。
証券会社の特定口座の源泉徴収有の口座で株式等を保有している場合には、これらの税金は源泉徴収され、税引き後の残額を受け取ることができる仕組みとなっています。これに対し、一般口座で保有している株式等の運用益については、確定申告が必要となります。
(2)配当金を受け取ったとき
配当金を受取った際にも、税金はかかります。配当金を受け取った時には、以下の計算によって所得税等が源泉徴収されます。
①上場株式等の配当の場合
配当の金額×20%(所得税15%、住民税5%)※=税金
②非上場株式等の配当の場合
配当の金額×20%(所得税のみ)※=税金
※この他に復興特別所得税がかかります
①については確定申告不要制度を選択することができます。また、確定申告する場合にも総合課税(配当控除の適用可)または申告分離課税のどちらかを選択することができます。いずれも納税者の判断により選択が可能です(一部の大口株主等に対するものを除く)。
②については原則として総合課税の対象となります。ただし、少額の配当(年換算10万円以下)については確定申告不要制度を選択することができます。
使いやすくなった新NISA制度活用のすすめ
先ほど確認したように、株式等の運用によって利益を得た場合、その利益には所得税等が課税されます。 しかし、NISA制度を活用すればこの非課税口座内で保有する株式等については、売却時の利益や配当金の受取りに課税されることなく非課税で利益を受け取ることができます。
新しくなったNISA制度は、年間投資枠、保有期間、保有限度額等が大幅に拡大され、一段と使いやすい制度となりました。新NISA制度の概要は以下の表のとおりです。
出典:金融庁「新しいNISAのポイント」
つみたて投資枠は旧制度のつみたてNISAに該当し、投資信託を積立で買付できます。長期的にコツコツと積み立て、投資対象を分散しながら、安定した運用を目指します。
これに対し、成長投資枠は旧制度の一般NISAに該当し、投資信託のほか、株式等の買付も可能です。幅広い商品への投資が可能で自由度が高いのがこちらの特徴です。 どちらも、18歳以上の国内居住者であれば制度の対象となります。
NISA口座は一人に対して、一つの金融機関で口座開設が可能です。年単位で金融機関を変更することは可能です。利用者それぞれの非課税保有限度額については、国税庁で一括管理されていますので、ご安心ください。
以前の制度では非課税保有期間に限度があったため、長期投資には向いていないなどの批判もありましたが、新しい制度では口座開設期間が恒久化され、長期での運用も可能になりました。ぜひ、早めに投資を開始して、できるだけ長い期間での運用を検討されることをお勧めします。
おわりに
自身が働いて給料等を稼ぐだけでなく、そこから生み出されるお金にも働いてもらうことで、資産価値を高める方法を真剣に考えなくてはいけない時代がすでに到来していると感じます。
もちろん投資にはリスクも伴います。しかし、投資はギャンブルとは異なり、例えば株式であれば、投資された企業にも投資した投資家にも利益をもたらす可能性があり、生産性のある比較的期待値の高いお金の使い方とも言えます。
2024年1月から始まったばかりの新NISA制度を活用すれば、税制の恩恵も受けられます。これまで投資とは無縁だったという方も、チャレンジしてみる絶好の機会ではないでしょうか。
ご不安や判断に迷うなどお困りの事がございましたら、私たち辻・本郷 税理士法人までお問い合わせください。
執筆担当:大宮事務所 高木 真弓 参考サイト 【金融庁】「新しいNISA」
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