藤野英人「日経平均は10万円へ、だが幸せとは限らない」 日経BOOKプラス

藤野英人「日経平均は10万円へ、だが幸せとは限らない」   日経BOOKプラス

1兆円を運用するプロ投資家・藤野英人さんがこれからの投資の勝ち筋を指南。「日経平均株価は今後10万円になる。しかしそれはバラ色の未来ではない」と藤野さんは語る。そもそも「10万円」の根拠とは? 2024.2.15

  • 藤野 英人/投資家・ひふみシリーズ最高投資責任者/レオス・キャ…

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この連載の記事一覧 最初から再生続きから再生↓以下はオプション。反映させるには「最初から再生」ボタンを押してくださいspeed: 1×閉じる 私は今、10年後に日経平均株価は10万円になっていると思っています。 こんなふうに書くと「藤野さんはだいぶ疲れているんじゃないか」などと心配されるかもしれません。しかし、私は本気です。

まず皆さんに考えてみていただきたいことがあります。 10年後、私たちは、吉野家の並盛の牛丼を1杯470円程度で食べられるのでしょうか?

私は、同じ品質のものを10年後に食べるためには最低でも1杯1000円は支払う必要があり、場合によっては1500円程度になっている可能性もあるだろうと思っています。 実際、現在アメリカで吉野家の牛丼価格はすでに1500円ほどになっているのです。10年後、日本で1500円程度になっていても、まったくおかしくはありません。

このような環境下では、日本の株式市場も上昇する可能性が高まります。株式市場は名目経済の動向を強く反映するので、インフレが続くことは株式市場上昇の可能性を意味するからです。ですから私は、10年後に日経平均株価が今の3倍程度の10万円になるというのは、それほど奇妙な話ではないと思っています。

それどころか、今後の世界経済の動向などを考えれば、むしろそうならないと考えるほうが不自然さがあると思うのです。

牛丼が1杯1500円程度になってもおかしくない(写真はイメージ)(写真:kai/stock.adobe.com)牛丼が1杯1500円程度になってもおかしくない(写真はイメージ)(写真:kai/stock.adobe.com)画像のクリックで拡大表示

インフレ時代に日本社会に起きる変化

インフレ時代には、日本の経営者もデフレ時代と比べて大きく変化していく可能性が高いでしょう。

世界の投資家や株式市場に目を向ける会社経営者は増加傾向にありますが、今後は経営者の若返りとそれに伴う意識の変化、グローバルな環境での経験値の上昇なども加わって、このトレンドがさらに加速するに違いありません。

新しい時代の経営者は、持続可能な経営を目指しながら、ROE(自己資本利益率)の向上などを企業経営の目標に掲げていくことになるでしょう。そして今後は、日本の大企業には有利な環境になると考えられます。デフレ時代とは違って「持つ経営」、つまり資産や人手を抱える経営がプラスの価値になる時代を迎えるからです。

もちろん、大企業ばかりが勢いを増すというわけではありません。 私は、政府が掲げるスタートアップ支援が、長期的には日本経済の成長率を押し上げるだろうと見ています。

かつて日本では起業意欲のある若者が少ないと言われてきましたが、教育環境や親の意識も変化してきています。私が長年にわたって大学でベンチャー起業論などの講義を行い学生の皆さんとコミュニケーションする中でも、若者の仕事に対する考え方や起業に対する受け止め方がひと昔前と大きく変わってきていることを強く感じているのです。

また、私はエンジェル投資家として日々多くの起業家とも会って話をしていますが、日本の起業家は質・量ともに大きく向上しています。今の20代には藤井聡太さんや大谷翔平さんのように突き抜けた天才が生まれてきていますが、起業家の中にもそのような若者が生まれつつあるのです。

例えば「スキマバイトアプリ」を展開するタイミーの創業者・小川嶺さんはその代表格といっていいでしょう。

2018年にタイミーのサービスを開始した当時、小川さんは21歳の大学生でした。2023年現在では、タイミーは500万人を超えるユーザー(ワーカー)を持ち、4万6000近い事業者がワーカーの募集に利用するほどの巨大サービスに成長しています。

資金調達額は400億円を超えており、しかもこのうち300億円ほどは、メガバンク等の金融機関から融資を引き出しているのです。これは未上場企業としては非常にまれなことであり、タイミーがいかに信用力を高めているかがうかがえます。

株式市場についていえば、中小型銘柄や成長銘柄が多く集まるグロース市場は、足元ではいくつかの要因で低迷しています。しかし期待が持てるスタートアップ企業が次々と登場していることを考えれば、10年後には次の日本をけん引するような会社が数多く現れ、時価総額上位企業の中にも今とは異なる顔ぶれが並ぶことになるのではないかと思います。

続きを読む 1/2決して強気ではない「日経平均10万円」 「日経平均株価10万円」の達成には、(1)インフレの進展、(2)大企業の変化、(3)次なる希望を示す新興企業の台頭の3つがそろうことが必要と考えられますが、私は大企業の変化と新興企業の台頭については楽観しています。「10年後に日経平均は10万円になる」と言っているのは冗談ではなく、本気です。

私はファンドマネージャーとして33年にわたり日本株を中心に運用を行ってきました。2003年に創業した運用会社レオス・キャピタルワークスは、運用資産残高1兆円を超え、投資信託「ひふみ」シリーズはのべ126万人以上のお客様に保有していただくまでに成長しています。

レオス・キャピタルワークスが運用しているひふみ投信の現在の基準価額は、約6万円です。日経平均株価が10年後に現在の3倍になって10万円に達しているとすれば、当然、ひふみ投信の基準価額も3倍にはなっていなければなりません(編集部注:記事内の数字は書籍刊行の2024年1月時点のもの)。

つまり日経平均10万円時代には、ひふみ投信の基準価額は18万円。さらに、市場価値を上回る運用を目指すアクティブファンドとして結果を出すことができれば、3倍ではとどまらず4倍や5倍にすることは不可能ではないと思っていますし、お客様のためには「10年後に基準価額30万円」を本気で目指すべきだと考えています。

私が強気な話をしているように思えるかもしれませんが、実はそうとも言えません。それは「日経平均10万円、ひふみ投信の基準価額30万円」の世界が、「すてきな未来」になるのか「残酷な未来」になるのかは人によって大きく分かれるはずだからです。

「すてきな未来」か「残酷な未来」かは人によって大きく分かれる(写真:Sondem/stock.adobe.com)「すてきな未来」か「残酷な未来」かは人によって大きく分かれる(写真:Sondem/stock.adobe.com)画像のクリックで拡大表示

インフレ下で拡大する「格差」

インフレでは、株式や不動産などの資産が値上がりしやすいので、これらの資産を持っている人にとってはインフレが有利に働きます。逆に厳しいのは現金で、ただ置いておけば価値がどんどん目減りします。

つまりデフレからインフレに転換するということは、「株式や不動産を持っている富裕層に恩恵がある」ということです。

今、日本の資産全体のうち、富裕層の上位1%が保有する割合は20%強です。「上位1%が2割も持っているのか、格差社会だな」と思うかもしれませんが、世界の中ではこの割合は低いほうで、米国では富裕層上位1%が国内資産全体の40%以上を支配しています(「格差の国際比較と資産形成の課題について」日本証券業協会、2022年2月)。

なぜこれまでの日本では富裕層の資産保有割合が高まらなかったのかというと、ここ30年間は株や不動産があまり上昇しなかったからです。これからインフレが始まれば、日本でも貧富の差が拡大していくことになるでしょう。そして、株や不動産を持っていない人、「資産はあるけれど現預金だけ」という人は、インフレのもと、現預金の価値の目減りで大きなダメージを受けるはずです。

(注)本記事は個別銘柄を推奨するものではありません。また、ファンドへの組入等を必ずしも約束するものではありません。記事内の数字は書籍刊行の2024年1月時点のもの。 『「日経平均10万円」時代が来る!』[画像のクリックで別ページへ] 30年ぶりのインフレ到来、新NISA始動……。環境が激変するなか、1兆円を運用するプロ投資家がこれからの投資の勝ち筋を指南。なぜ日経平均が10万円になると言えるのか、私たちはどのように動くべきなのか、が明確に分かります。 藤野英人著/日本経済新聞出版/1650円(税込み) - 本日

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