株式分割とは?メリットやデメリットをわかりやすく解説|M&Aコラム

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株式分割とは、既に発行済の一つの株式を複数の株式に分けることを指します。本記事では、株式分割の概要や、企業、投資家それぞれの視点によるメリットやデメリット、手続きの流れ、実際に株式分割を行った企業事例をご紹介します。

株式分割とは、既に発行済の一つの株式を複数の株式に分けることを指します。本記事では、株式分割の概要や、企業、投資家それぞれの視点によるメリットやデメリット、手続きの流れ、実際に株式分割を行った企業事例をご紹介します。 経営・ビジネス 更新日: 2024年05月02日

⽬次

表示- 1. 株式分割とは?

  • 1-1. 増資との違い
    1. 株式分割を行う企業が増えている背景
    1. 株式分割を行うメリット
  • 3-1. 株式の流動性を高められる
  • 3-2. 配当の代替にできる
  • 3-3. 市場区分の昇格を狙える
  • 3-4. 株式購入の敷居が下がる
  • 3-5. 株式の売買自由度が上がる
  • 3-6. 配当利回りが維持できる
    1. 株式分割を行うデメリット
  • 4-1. 短期的な投資家を集めるリスクがある
  • 4-2. 管理コストが増加する
  • 4-3. 企業イメージに影響する懸念もある
  • 4-4. 単元未満株(端株)が発生する場合がある
  • 4-5. 株価の安定性が損なわれる場合もある
  • 4-6. 投資家の混乱を招く懸念がある
    1. 株式分割を行う手順
  • 5-1. ①取締役会での株式分割決議
  • 5-2. ②株主への公告
  • 5-3. ③株式分割の効力発生
  • 5-4. ④法務務局への変更登記申請
    1. 株式分割を行った企業の事例【2023年最新】
  • 6-1. 任天堂による株式分割の事例
  • 6-2. オリエンタルランドの株式分割の事例
  • 6-3. トヨタによる株式分割の事例
  • 6-4. Zホールディングスによる株式分割の事例
  • 6-5. アップルによる株式分割の事例
    1. 終わりに
  • 7-1. 著者

株式分割とは新NISA(少額投資非課税制度)の開始により、投資家層のさらなる拡大が進むことが予想される中、企業による株式分割の動きが注目されています。 本記事では、株式分割の概要や、企業、投資家それぞれの視点によるメリットやデメリット、手続きの流れ、実際に株式分割を行った企業事例をご紹介します。

日本M&Aセンターでは、様々な手法のM&A・経営戦略を経験・実績豊富なチームがご支援します。詳しくはコンサルタントまでお問合せください。無料相談はこちら

株式分割とは?

株式分割とは、既に発行済の一つの株式を複数の株式に分けることを指します。 企業価値は変わらないため、発行済みの株式総数が増える分、1株当たりの株価は下がります。

例えば、1株1000円の銘柄を1対2で株式分割を行うと、理論的には1株500円になります。

2023年7月に行われたNTTによる1対25の株式分割では、それまで約41万円だった最低投資金額が約1.6万円になりました。

このように株式の購入に必要な最低投資額が下がるため、若年層を含め個人が投資しやすい環境となり、投資家層の拡大を図ることが期待できます。

また、株式分割は1株を2株や3株など整数倍だけでなく、1株につき1.5株などのような分割が行われることもあります。 分割によって増えた株式は、既存の株主に割り当てられるため、1株を2株に株式分割する場合は、株式分割後に株主が保有する株式数は倍になります。

増資との違い

株式分割と増資との違いは、資本金等の額の変動有無です。

株式分割も増資も、どちらも発行済株式数が増えることに変わりありませんが、株式分割が株式の単価を下げて発行済株式総数を増やすのに対し、増資は新たに発行した株式と引き換えに投資家からの出資を受けることになります。

株式分割を行う企業が増えている背景

東京証券取引所は、個人が投資しやすい環境を整備するため、望ましい投資単位の水準を「5万円以上、50万円未満」と定めています。

かねてより投資単位が50万円以上の上場企業に対し、投資単位の引き下げの検討要請を行ってきたことから、株式分割を行う企業が増加傾向にあります。

また、2024年1月から始まる新「NISA」を前に、個人投資家がより株式を買いやすくなるよう、株式分割に踏み切る企業も増えています。

※2024年に入り、株式分割の実施を発表した主な企業(2024年2月現在、順不同)

企業名 効力発生日 比率 株式分割前の発行済株式総数 株式分割後の発行済株式総数 株式分割後の発行可能株式総数
SOMPOホールディングス 4月1日 1:3 330,160,689 株 990,482,067 株 3,600,000,000 株
富士フイルムホールディングス 4月1日 1:3 414,625,728 株 1,243,877,184 株 2,400,000,000 株
テルモ 4月1日 1:2 747,682,540 株 1,495,365,080 株 5,900,000,000 株
三菱重工業 4月1日 1:10 337,364,781 株 3,373,647,810 株 6,000,000,000 株
川崎汽船 4月1日 1:3 238,242,689 株 714,728,067 株 1,800,000,000 株
東日本旅客鉄道 4月1日 1:3 378,137,400 株 1,134,412,200 株 4,500,000,000 株

株式分割を行うメリット

株式分割のメリットを、分割を行う企業側、投資家側それぞれの観点でご紹介します。

分割を行う企業側の株式分割の主なメリットは、次の通りです。

株式の流動性を高められる

株式分割で得られる最大のメリットは、株式の流動性を高められることです。つまり分割比率に応じて株価も下がるため、より多くの投資家が株式購入のチャンスを獲得できます。新たに株主となる投資家が増えるため、株主数の増加も期待できます。

配当の代替にできる

株式分割後も1株あたりの配当を変更しなければ、株主は株式分割によって新たに取得した株式数分だけ、受け取る配当が増えることになります。この方法を活用すれば、1株あたりの配当金額を変更することなく配当増額の代替として株主に利益を還元することができます。

市場区分の昇格を狙える

上場するためには、株主数や流通株式数などに関する一定の基準をクリアしなければなりません。株式分割を行うと、株主数や流通している株式数が増えるため、上位市場への昇格が狙いやすくなります。

続いて、投資家側のメリットについてご紹介します。

株式購入の敷居が下がる

株式分割によって1株あたりの価格が下がるので、個人投資家が株を購入しやすくなります。これによって、より多くの人が投資を始めることができ、新たな投資家層を引き込むことが可能になります。

例えば、1株あたり2万円の株価がついている株式を100株単位で購入するためには、最低でも200万円が必要です。 しかし、1:5の割合で株式分割が行われれば理論上株価は4千円になるため、100株単位でも40万円で購入することが可能になります。

株式の売買自由度が上がる

株式の売買単価が下がると、「少しだけ買い増す」ことや「値が上がっているうちに少しだけ売却する」など、株式の売買の自由度が上がり、市場での取引が活発になることが期待できます。

配当利回りが維持できる

株式分割を行うことで、1株当たりの配当が下がりますが、投資家が保有する株数が増えるため、全体の配当利回りはほぼ変わらない場合が多いです。これにより、投資家は安定した利回りを期待できます。

これらのメリットを通じて、企業は株式の市場での需給状況を改善し、より広い層の投資家から支持を集めることができるようになります。 ただし、株式分割は企業の実質的な価値を変えるものではないため、その効果は企業の基本的な健全性や成長性に依存する、という点も理解しておくことが重要です。

株式分割を行うデメリット

続いて株式分割デメリットについて、企業側のデメリットから見ていきます。

短期的な投資家を集めるリスクがある

1株あたりの価格が安くなるため、株を売買する際の心理的な障壁が低くなり、投資家が短期的な利益を追求する取引を行いやすくなる場合があります。 これが株価の急激な下落につながる可能性も考えられます。

管理コストが増加する

株式分割によって株式の数が増えると、株式の管理(株主名簿の管理、株主総会の運営等)にかかるコストが増加します。また、株式分割の手続きには、時間とコストがかかります。これには、関連する法的手続きや、株主への通知、証券取引所への報告などが含まれます。

企業イメージに影響する懸念もある

株式分割は一般にポジティブに受け取られることが多いですが、分割によって1株の価格が大幅に下がると、一部の人々から「安い株」という印象を持たれ、企業のイメージに影響を与える場合もあります。

続いて投資家側から見た株式分割のデメリットは、主に以下の通りです。

単元未満株(端株)が発生する場合がある

株式分割を行うと、比率によっては単元未満株(端株)が生じる場合があります。

例えば、100株持っている株式が1:1.1に株式分割された場合、1株が1.1株に分割されるため、保有株式数は「100株×1.1=110株」になります。

しかし、市場での売買単位は100株ですから、増えた10株に関しては市場で売れません。

そのため、この端株を売却しようと思ったら、株式を発行している会社に対して買取請求を行わなければなりません。この際に、指値でなく成行注文するしかできず、場合によっては手数料負けしてしまうこともあります。

株価の安定性が損なわれる場合もある

一般的に株主が増えると、株価は安定する傾向にありますが、投機目的の投資家が増えることで、株価のボラティリティ(価格の変動幅)が大きくなる可能性があります。その結果、株価の安定性が損なわれる場合もあります。

投資家の混乱を招く懸念がある

株式分割は、特に初心者の投資家にとっては、理解しにくい場合があります。これにより、株の取引に対する投資家の不安が高まる場合もあります。

これらのデメリットは、株式分割によって引き起こされる可能性のある問題をいくつか示しています。したがって、企業は株式分割の実施を検討する際に、これらの点を慎重に評価し、全体としての利益がデメリットを上回る場合に、実施を決定することが重要です。

日本M&Aセンターでは、様々な手法のM&A・経営戦略を経験・実績豊富なチームがご支援します。詳しくはコンサルタントまでお問合せください。無料相談はこちら

株式分割を行う手順

株式分割を行う場合の具体的な手順は、主に以下の4つです。

①取締役会での株式分割決議

株式分割を行うためには、取締役会設置会社においては取締役会での決議(非設置会社の場合は株主総会の普通決議)を行う必要があります。 決議では、以下の3点が決定されます。

  • 株式分割の比率とその基準日 - 株式分割の効力発生日 - 株式分割する株式の種類また決議の前に、定款で定められている「発行可能株式総数」を確認する必要があります。

株式分割の比率によっては、現在の定款で定められている「発行可能株式総数」を超えてしまう可能性があります。そのような場合は、株式分割の決議前に、取締役会の決議で定款の「発行可能株式総数」を変更しなければなりません(会社法184条2項)。

②株主への公告

取締役会で株式分割が決議されたら、どの時点で分割された株式が株主に割り当てられるのかを伝える必要があります。

この分割された株式が割り当てられた日を「基準日」といい、基準日の2週間前までには株主に対して基準日公告を行わなければなりません(会社法124条)。

③株式分割の効力発生

株式分割の効力発生日を迎えると、株主には分割によって増えた株式が与えられます。またこの時、1株に満たない端数が生じた場合は、その端数を合計したものを競売等で売却した後に売却代金を株主に交付します。

④法務務局への変更登記申請

株式分割を行ってから2週間以内に、本店所在地を管轄している法務局で、株式分割に関する変更登記申請を行います。 なお、株式分割の変更登記申請を行う場合、分割する株式の比率や株式数に関係なく一律30,000円の登録免許税が必要となります。

株式分割を行った企業の事例【2023年最新】

最後に、株式分割を用いた企業の事例をご紹介します。

任天堂による株式分割の事例

任天堂は2022年10月1日付で発行済みの普通株式を1株につき10株への分割を行いました。これにより、投資単位が約600万円から約60万円に引き下げられ、個人株主が参入しやすくなったとされています。

背景としては、かねてより「株価が高く投資しづらい」など、分割を求める意見が個人投資家から多く寄せられていたことから、購入層を広げることを目的に、31年ぶりに株式分割が行われました。

2023年6月26日には、投資単位の引き下げ(株式分割)について「投資家層の拡大・株式の流動性を高めるための有効な施策」とし、今後については「多面的な視点で慎重に検討する」との方針を開示しました。

オリエンタルランドの株式分割の事例

東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは、2023年4月1日付で株式1株を5株とする株式分割を行いました。

これは、投資家層の拡大や流動性の向上につなげることを目的に行われ、さらに株式を長く持ってもらうために、個人投資家に人気の株主優待制度も分割に伴い見直されました。

トヨタによる株式分割の事例

トヨタ自動車は、2021年9月12日に、1991年以来30年ぶりとなる株式分割を1:5の分割比率で行うことを発表しました。 トヨタ自動車の株式は、発表当時1株あたり約1万円強で売買単位は100株のため、トヨタの株式を購入する場合最低でも100万円強が必要でした。

これが5倍に分割されるため、最低売買単位は20万円強まで下がり、流動性はかなり改善されることになります。

トヨタ自動車は国内企業の中で時価総額がトップであるのに対し、株主数は15位であるため、株式分割によって投資家にとって買いやすい売買金額にまで下げ、長期保有してもらえる個人投資家を呼び込む目的があると言われています。

また同時に、2,500億円の自社株買いを行うことも発表されました。企業が自社株買いを行うと、市場に出回っている株式数が減るため、株価は一般的に上がる傾向にあります。したがって、既存の株主や今回の株式分割で新たに株主になる投資家に対し、絶好のアピールが出来たといえるでしょう。

Zホールディングスによる株式分割の事例

Zホールディングスの前進であるインターネットポータルサイト大手のヤフーは、1997年11月4日の上場以降株式分割を繰り返してきました。上場時の公募価格70万円に対し、初値が200万円ほど着いたあと、ITバブルの波に乗ったことなどもあり企業価値は急上昇し続け、株価は上昇の一途を辿ります。

その対策として、急激に上がり過ぎる株価に対して株式の流動性を持たせるために、株式分割が行われます。

1999年の3月、初めての株式分割が1:2の割合で行われて以降、2006年の3月までの間に同じ比率で13回の株式分割が行われ、14回目の2013年9月26日には1:100の株式分割が行われました。こうして、上場当初からヤフーの株を持っていた人は、1株が何と81万9,200株にまで増えることになりました。

この結果、ヤフー側は株式の流動性を高めることに成功し、投資家側は株式分割によって多くの株式を得ることとなりました。

アップルによる株式分割の事例

2020年7月30日、iPhoneなどを製造販売している米国アップルは、1980年の株式公開以来5回目の株式分割を行うことを発表しました。

株価が過去1年間で約80%も上昇したことを受け、株式の流動性を確保しより多くの投資家に株式を買いやすくする目的で、1:4の株式分割を行うこととなりました。

アップルのように業績も順調で、企業価値も高い企業は、株価が急激に上昇することもあるため、株式分割によって株価が一定の範囲内に収まるよう、コントロールすることは、投資家に対して有効なアピールになりえます。

終わりに

株式分割は、株式の流動性を高めて個人の投資家を新たに呼び込めるなどのメリットがある一方で、管理コストなどのデメリットもあります。メリットとデメリットの双方を天秤にかけながら、最善策の選択を行う必要があります。

日本M&Aセンターでは、様々な手法のM&A・経営戦略を経験・実績豊富なチームがご支援します。詳しくはコンサルタントまでお問合せください。無料相談はこちら

著者

M&A マガジン編集部M&Aマガジン編集部

日本M&Aセンター

M&Aマガジンは「M&A・事業承継に関する情報を、正しく・わかりやすく発信するメディア」です。中堅・中小企業経営者の課題に寄り添い、価値あるコンテンツをお届けしていきます。

株式分割とは、既に発行済の一つの株式を複数の株式に分けることを指します。 企業価値は変わらないため、発行済みの株式総数が増える分、1株当たりの株価は下がります。

例えば、1株1000円の銘柄を1対2で株式分割を行うと、理論的には1株500円になります。

2023年7月に行われたNTTによる1対25の株式分割では、それまで約41万円だった最低投資金額が約1.6万円になりました。

このように株式の購入に必要な最低投資額が下がるため、若年層を含め個人が投資しやすい環境となり、投資家層の拡大を図ることが期待できます。

また、株式分割は1株を2株や3株など整数倍だけでなく、1株につき1.5株などのような分割が行われることもあります。 分割によって増えた株式は、既存の株主に割り当てられるため、1株を2株に株式分割する場合は、株式分割後に株主が保有する株式数は倍になります。

株式分割と増資との違いは、資本金等の額の変動有無です。

株式分割も増資も、どちらも発行済株式数が増えることに変わりありませんが、株式分割が株式の単価を下げて発行済株式総数を増やすのに対し、増資は新たに発行した株式と引き換えに投資家からの出資を受けることになります。

東京証券取引所は、個人が投資しやすい環境を整備するため、望ましい投資単位の水準を「5万円以上、50万円未満」と定めています。

かねてより投資単位が50万円以上の上場企業に対し、投資単位の引き下げの検討要請を行ってきたことから、株式分割を行う企業が増加傾向にあります。

また、2024年1月から始まる新「NISA」を前に、個人投資家がより株式を買いやすくなるよう、株式分割に踏み切る企業も増えています。

※2024年に入り、株式分割の実施を発表した主な企業(2024年2月現在、順不同)

企業名 効力発生日 比率 株式分割前の発行済株式総数 株式分割後の発行済株式総数 株式分割後の発行可能株式総数
SOMPOホールディングス 4月1日 1:3 330,160,689 株 990,482,067 株 3,600,000,000 株
富士フイルムホールディングス 4月1日 1:3 414,625,728 株 1,243,877,184 株 2,400,000,000 株
テルモ 4月1日 1:2 747,682,540 株 1,495,365,080 株 5,900,000,000 株
三菱重工業 4月1日 1:10 337,364,781 株 3,373,647,810 株 6,000,000,000 株
川崎汽船 4月1日 1:3 238,242,689 株 714,728,067 株 1,800,000,000 株
東日本旅客鉄道 4月1日 1:3 378,137,400 株 1,134,412,200 株 4,500,000,000 株

株式分割のメリットを、分割を行う企業側、投資家側それぞれの観点でご紹介します。

分割を行う企業側の株式分割の主なメリットは、次の通りです。

株式分割で得られる最大のメリットは、株式の流動性を高められることです。つまり分割比率に応じて株価も下がるため、より多くの投資家が株式購入のチャンスを獲得できます。新たに株主となる投資家が増えるため、株主数の増加も期待できます。

株式分割後も1株あたりの配当を変更しなければ、株主は株式分割によって新たに取得した株式数分だけ、受け取る配当が増えることになります。この方法を活用すれば、1株あたりの配当金額を変更することなく配当増額の代替として株主に利益を還元することができます。

上場するためには、株主数や流通株式数などに関する一定の基準をクリアしなければなりません。株式分割を行うと、株主数や流通している株式数が増えるため、上位市場への昇格が狙いやすくなります。

続いて、投資家側のメリットについてご紹介します。

株式分割によって1株あたりの価格が下がるので、個人投資家が株を購入しやすくなります。これによって、より多くの人が投資を始めることができ、新たな投資家層を引き込むことが可能になります。

例えば、1株あたり2万円の株価がついている株式を100株単位で購入するためには、最低でも200万円が必要です。 しかし、1:5の割合で株式分割が行われれば理論上株価は4千円になるため、100株単位でも40万円で購入することが可能になります。

株式の売買単価が下がると、「少しだけ買い増す」ことや「値が上がっているうちに少しだけ売却する」など、株式の売買の自由度が上がり、市場での取引が活発になることが期待できます。

株式分割を行うことで、1株当たりの配当が下がりますが、投資家が保有する株数が増えるため、全体の配当利回りはほぼ変わらない場合が多いです。これにより、投資家は安定した利回りを期待できます。

これらのメリットを通じて、企業は株式の市場での需給状況を改善し、より広い層の投資家から支持を集めることができるようになります。 ただし、株式分割は企業の実質的な価値を変えるものではないため、その効果は企業の基本的な健全性や成長性に依存する、という点も理解しておくことが重要です。

続いて株式分割デメリットについて、企業側のデメリットから見ていきます。

1株あたりの価格が安くなるため、株を売買する際の心理的な障壁が低くなり、投資家が短期的な利益を追求する取引を行いやすくなる場合があります。 これが株価の急激な下落につながる可能性も考えられます。

株式分割によって株式の数が増えると、株式の管理(株主名簿の管理、株主総会の運営等)にかかるコストが増加します。また、株式分割の手続きには、時間とコストがかかります。これには、関連する法的手続きや、株主への通知、証券取引所への報告などが含まれます。

株式分割は一般にポジティブに受け取られることが多いですが、分割によって1株の価格が大幅に下がると、一部の人々から「安い株」という印象を持たれ、企業のイメージに影響を与える場合もあります。

続いて投資家側から見た株式分割のデメリットは、主に以下の通りです。

株式分割を行うと、比率によっては単元未満株(端株)が生じる場合があります。

例えば、100株持っている株式が1:1.1に株式分割された場合、1株が1.1株に分割されるため、保有株式数は「100株×1.1=110株」になります。

しかし、市場での売買単位は100株ですから、増えた10株に関しては市場で売れません。

そのため、この端株を売却しようと思ったら、株式を発行している会社に対して買取請求を行わなければなりません。この際に、指値でなく成行注文するしかできず、場合によっては手数料負けしてしまうこともあります。

一般的に株主が増えると、株価は安定する傾向にありますが、投機目的の投資家が増えることで、株価のボラティリティ(価格の変動幅)が大きくなる可能性があります。その結果、株価の安定性が損なわれる場合もあります。

株式分割は、特に初心者の投資家にとっては、理解しにくい場合があります。これにより、株の取引に対する投資家の不安が高まる場合もあります。

これらのデメリットは、株式分割によって引き起こされる可能性のある問題をいくつか示しています。したがって、企業は株式分割の実施を検討する際に、これらの点を慎重に評価し、全体としての利益がデメリットを上回る場合に、実施を決定することが重要です。

日本M&Aセンターでは、様々な手法のM&A・経営戦略を経験・実績豊富なチームがご支援します。詳しくはコンサルタントまでお問合せください。無料相談はこちら 株式分割を行う場合の具体的な手順は、主に以下の4つです。

株式分割を行うためには、取締役会設置会社においては取締役会での決議(非設置会社の場合は株主総会の普通決議)を行う必要があります。 決議では、以下の3点が決定されます。

  • 株式分割の比率とその基準日 - 株式分割の効力発生日 - 株式分割する株式の種類 また決議の前に、定款で定められている「発行可能株式総数」を確認する必要があります。

株式分割の比率によっては、現在の定款で定められている「発行可能株式総数」を超えてしまう可能性があります。そのような場合は、株式分割の決議前に、取締役会の決議で定款の「発行可能株式総数」を変更しなければなりません(会社法184条2項)。

取締役会で株式分割が決議されたら、どの時点で分割された株式が株主に割り当てられるのかを伝える必要があります。

この分割された株式が割り当てられた日を「基準日」といい、基準日の2週間前までには株主に対して基準日公告を行わなければなりません(会社法124条)。

株式分割の効力発生日を迎えると、株主には分割によって増えた株式が与えられます。またこの時、1株に満たない端数が生じた場合は、その端数を合計したものを競売等で売却した後に売却代金を株主に交付します。

株式分割を行ってから2週間以内に、本店所在地を管轄している法務局で、株式分割に関する変更登記申請を行います。 なお、株式分割の変更登記申請を行う場合、分割する株式の比率や株式数に関係なく一律30,000円の登録免許税が必要となります。

最後に、株式分割を用いた企業の事例をご紹介します。

任天堂は2022年10月1日付で発行済みの普通株式を1株につき10株への分割を行いました。これにより、投資単位が約600万円から約60万円に引き下げられ、個人株主が参入しやすくなったとされています。

背景としては、かねてより「株価が高く投資しづらい」など、分割を求める意見が個人投資家から多く寄せられていたことから、購入層を広げることを目的に、31年ぶりに株式分割が行われました。

2023年6月26日には、投資単位の引き下げ(株式分割)について「投資家層の拡大・株式の流動性を高めるための有効な施策」とし、今後については「多面的な視点で慎重に検討する」との方針を開示しました。

東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは、2023年4月1日付で株式1株を5株とする株式分割を行いました。

これは、投資家層の拡大や流動性の向上につなげることを目的に行われ、さらに株式を長く持ってもらうために、個人投資家に人気の株主優待制度も分割に伴い見直されました。

トヨタ自動車は、2021年9月12日に、1991年以来30年ぶりとなる株式分割を1:5の分割比率で行うことを発表しました。 トヨタ自動車の株式は、発表当時1株あたり約1万円強で売買単位は100株のため、トヨタの株式を購入する場合最低でも100万円強が必要でした。

これが5倍に分割されるため、最低売買単位は20万円強まで下がり、流動性はかなり改善されることになります。

トヨタ自動車は国内企業の中で時価総額がトップであるのに対し、株主数は15位であるため、株式分割によって投資家にとって買いやすい売買金額にまで下げ、長期保有してもらえる個人投資家を呼び込む目的があると言われています。

また同時に、2,500億円の自社株買いを行うことも発表されました。企業が自社株買いを行うと、市場に出回っている株式数が減るため、株価は一般的に上がる傾向にあります。したがって、既存の株主や今回の株式分割で新たに株主になる投資家に対し、絶好のアピールが出来たといえるでしょう。

Zホールディングスの前進であるインターネットポータルサイト大手のヤフーは、1997年11月4日の上場以降株式分割を繰り返してきました。上場時の公募価格70万円に対し、初値が200万円ほど着いたあと、ITバブルの波に乗ったことなどもあり企業価値は急上昇し続け、株価は上昇の一途を辿ります。

その対策として、急激に上がり過ぎる株価に対して株式の流動性を持たせるために、株式分割が行われます。

1999年の3月、初めての株式分割が1:2の割合で行われて以降、2006年の3月までの間に同じ比率で13回の株式分割が行われ、14回目の2013年9月26日には1:100の株式分割が行われました。こうして、上場当初からヤフーの株を持っていた人は、1株が何と81万9,200株にまで増えることになりました。

この結果、ヤフー側は株式の流動性を高めることに成功し、投資家側は株式分割によって多くの株式を得ることとなりました。

2020年7月30日、iPhoneなどを製造販売している米国アップルは、1980年の株式公開以来5回目の株式分割を行うことを発表しました。

株価が過去1年間で約80%も上昇したことを受け、株式の流動性を確保しより多くの投資家に株式を買いやすくする目的で、1:4の株式分割を行うこととなりました。

アップルのように業績も順調で、企業価値も高い企業は、株価が急激に上昇することもあるため、株式分割によって株価が一定の範囲内に収まるよう、コントロールすることは、投資家に対して有効なアピールになりえます。

株式分割は、株式の流動性を高めて個人の投資家を新たに呼び込めるなどのメリットがある一方で、管理コストなどのデメリットもあります。メリットとデメリットの双方を天秤にかけながら、最善策の選択を行う必要があります。

日本M&Aセンターでは、様々な手法のM&A・経営戦略を経験・実績豊富なチームがご支援します。詳しくはコンサルタントまでお問合せください。無料相談はこちら M&A マガジン編集部M&Aマガジン編集部

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経営・ビジネス 2023年11月21日 IPO(新規公開株式)とは?上場するメリットやデメリット、審査基準を紹介 IPOを行った企業は、成長に向けて多くのアドバンテージを獲得できます。そのため多くの企業は、IPOを企業が目指すべき通過点の一つとして見据えています。本記事では、IPOの概要やメリット・デメリット、審査基準、IPOを成功に導くためのポイントについてご紹介します。※本記事のIPOに関する記述は、一般市場を想定しています。IPOとはIPOとは「InitialPublicOffering(※)」の略語で

今さら聞けない「PBR1倍割れ」とは?日本企業がとるべき対策は?

経営・ビジネス 2023年11月20日 今さら聞けない「PBR1倍割れ」とは?日本企業がとるべき対策は? 2023年3月、東京証券取引所(東証)から「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて」が発表され、上場企業の多くで「PBR1倍割れ」が起きていること、資本収益性や成長性の観点で課題があることなどが指摘されました。東証が上場企業に対してこのような積極的な要請を行うのは異例として、大きな話題となりました。そして、東証が指摘したさまざまな課題のなかでも、特に注目を集めてい

インサイダー取引とは?事例を含めわかりやすく解説

経営・ビジネス 2023年10月13日 インサイダー取引とは?事例を含めわかりやすく解説 インサイダー取引は法律で禁止されています。特に資本提携や合併などを検討している企業経営者、担当者は正しく認識し、注意を払わなければなりません。本記事では、インサイダー取引の概要、未然に防ぐための対策などについて解説します。日本M&Aセンターは、徹底した情報管理体制のもと、経験豊富なコンサルタントが、安心・安全なM&Aのご支援を行います。詳しくは専門のコンサルタントまでお気軽にお問合せください。M&

事業ポートフォリオ変革をバックアップ!M&A仲介最大手による上場企業向け新サービスとは

M&A全般 2023年08月04日 事業ポートフォリオ変革をバックアップ!M&A仲介最大手による上場企業向け新サービスとは 日本M&Aセンターが上場企業の事業ポートフォリオ変革を多数お手伝いしていること、ご存じでしょうか。このたびサービスラインナップの拡充とともに、事業ポートフォリオの総合分析と個別事業に関するカーブアウト分析の簡易版について、無料でご提供を開始しました。専門チームを率いる西川大介成長戦略開発センター長に、どのようなサービスなのかを聞きました。日本M&Aセンター成長戦略開発センターのコンサルタントたち@

TOKYO PRO Market上場企業経営者の会「BELLS」設立記念式典を開催

広報室だより 2022年11月14日 TOKYO PRO Market上場企業経営者の会「BELLS」設立記念式典を開催 東京証券取引所が運営する株式市場「TOKYOPROMarket(東京プロマーケット)」の活性化と上場企業のさらなる成長に貢献するため、日本M&Aセンターは、2022年11月7日にTOKYOPROMarket上場企業経営者の会「BELLS」を設立いたしました。同日、東京都内にて開催した記念式典には、38社57名の皆様にご出席いただき、参加された経営者同士、交流を深められていました。勢いを増す、TOK

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新日本建物とタスキ、共同株式移転による経営統合へ

2023年11月16日 株式会社新日本建物(8893)と株式会社タスキ(2987)は、共同株式移転により両社の完全親会社となる「株式会社タスキホールディングス」の設立を決定した。新日本建物とタスキを株式移転完全子会社、新規に設立する共同持株会社を株式移転完全親会社とする共同株式移転方式。新日本建物の普通株式1株に対して共同持株会社の普通株式1株を、タスキの普通株式1株に対して共同持株会社の普通株式2.24株を割当交付する

富士ソフト、上場子会社4社をTOBで完全子会社化へ

2023年11月08日 富士ソフト株式会社(9749)は、公開買付け(TOB)により上場子会社4社を完全子会社化すると発表した。サイバネットシステム株式会社(4312)、株式会社ヴィンクス(3784)、サイバーコム株式会社(3852)、富士ソフトサービスビューロ株式会社(6188)の4社で、富士ソフトのTOBに賛同を表明している。同4社は、上場廃止予定。【TOB概要】サイバネットシステム買付け等の価格は、普通株式1株につ

電通グループ、ロシア事業を現地パートナーへ譲渡

2022年11月14日 株式会社電通グループ(4324)は、グループのロシア事業を担う現地合弁会社の、グループ保有持分の全てを、現地パートナーへ譲渡することを決定した。電通グループは、日本で最大手の広告代理店。グループ全体の成長持続および競争力強化に向けた各種環境の整備と支援、ならびにグループガバナンスの推進を行っている。本件は、ロシア政府委員会を含む行政機関による承認を必要とするため、譲渡完了は承認次第となる。電通グル

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