株の相続税はいくら?評価額の計算方法と節税・手続きを紹介:朝日新聞デジタル

株の相続税はいくら?評価額の計算方法と節税・手続きを紹介:朝日新聞デジタル

株も相続財産のひとつであり、相続発生時には相続税評価や計算、申告が必要です。さらに、被相続人の証券口座から相続人に証券口座を移す際には所定の手続きをしなければなりません。本記事では、株の相続税評価額や計算方法、相続手続き方法を紹介します。

  • ■ 株の相続税がいくらになるかわかる
  • ■ 相続した株の評価方法がわかる
  • ■ 株にかかる相続税の節税方法がわかる
  • ■ 株の相続方法や必要書類がわかる
  • ■ 株式相続の注意点がわかる

価値がわからない財産を相続した場合、ほとんどの方が戸惑ってしまうのではないでしょうか。いくらの価値があるのか、換金はできるのか、また相続税はかかるのか…など、相続はしたものの、価値がわからずに不安になってしまう方もおられるでしょう。

価値がわからない相続財産の代表といえば有価証券であり、中でも非上場株式の価値は発行している企業でさえ把握できていないこともあります。また、株式の売買がネット中心になった現在、亡くなった方の保有株式がわからないケースも発生しています。株も相続財産の1つなので、評価額を正しく把握できない、あるいは申告を漏らした場合はペナルティが科せられる可能性があります。

今回は株式の評価額や相続税の額、節税方法について解説しますので、株を相続した方はぜひ参考にしてください。

株の相続税計算方法

相続によって株式を取得した場合、次の手順で相続税の税額を計算します。

  1. 株式の評価額を算出
  2. その他の財産と合算して遺産総額を算出
  3. 負債や非課税財産、基礎控除など差し引いて課税遺産総額を算出
  4. 相続税の速算表を使って相続税額を算出 相続税は、取得金額に応じて税率も上がる累進課税方式であり、国税庁ホームページから参照できる速算表の税率を適用させて税額を計算します。
法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

相続税の速算表(国税庁)

課税遺産総額が2,000万円の場合、15%の税率と50万円の控除を適用させるため、相続税の総額は250万円になります。なお、実際の計算には基礎控除なども反映させます。

相続財産と相続税の早見表まとめ【相続税の税率や計算方法も解説】

株の相続税評価方法

相続した株式は上場・非上場によって評価方法が異なります。株価が公開されている上場株式の評価額は容易に把握できますが、非上場株式は会社規模などの要素をもとに、自分で計算しなければなりません。具体的には次のような評価方法になるので、参考にしてください。

上場株式の評価方法

株価が公開されている上場株式の場合、基本的に相続発生日の「終値」が相続税評価額になります。ただし、相続発生日に株価が高騰する可能性もゼロではなく、相続人にとって相続税が高額になることも考えられます。そこで上場株式の相続税評価額は、次に挙げる3つから一番低いものを選んでよいとされています。

  • 相続が発生した月の毎日の終値の平均値
  • 相続が発生した月の前月の毎日の終値の平均値
  • 相続が発生した月の前々月の毎日の終値の平均値

過去の株価はインターネットで閲覧できますが、集計は自分で行うことになります。証券会社が発行する残高証明書には相続発生日の終値や、上記3つの終値も記載されているので、好みの方法で株価を調べるとよいでしょう。なお、残高証明書の受け取りには名義人の死亡がわかる戸籍謄本が必要です。

非上場株式の評価方法

公開されているデータが少ない非上場株式の場合、次のいずれかの方法で相続税評価額を算出します。

  • 原則的評価方式
  • 配当還元方式

一般的な評価方法は原則的評価方式ですが、会社の規模などによって3つの方式に枝分かれしています。配当還元方式は、持ち株数が少なく経営にも関わっていない場合の株式評価に使われます。

では、それぞれの評価方法をみていきましょう。

原則的評価方式

非上場株式の評価方法としては一般的な方式で、発行会社の規模や業績などに応じて3種類の方式から選択します。

  • 類似業種比準方式
  • 純資産価額方式
  • 併用方式

類似業種比準方式は業種が類似する上場会社の株価を基準にする方式で、純資産価額方式は会社を清算すると仮定し、株主1人あたりの分配額で評価します。併用方式は上記2つのミックスであり、発行会社の規模により類似業種比準方式と純資産価額方式を90:10、75:25、60:40、50:50のいずれかの割合で併用します。純資産価額方式の場合は利益と負債の総合評価になりますが、歴史の長い会社は利益累計がプラス評価されるため、株価も高額評価されることが多いようです。類似業種比準方式は、純資産価額方式に比べて低めに評価されることがほとんどです。

配当還元方式

少ない持ち株数で会社経営には関与しておらず、配当目的で株式を保有する方もおられます。このような場合は配当還元方式を使い、以下の計算式で配当還元価額を求めます。

  • 計算式
  • {(過去2年間の1株あたりの配当額×1/2)÷10%}×(1株あたりの資本金額÷50円)

過去2年間とは相続開始前の2期の決算期を指し、1株あたりの資本金額は資本金と資本剰余金の合計額になります。それぞれ法人税の申告書に記載される内容ですが、ディスクロージャーのように開示される情報ではないため、発行会社に問い合わせて教えてもらうことになります。

株の相続税を節税する方法

株式は高額な相続財産になりやすいため、効果的な相続税対策が必要になります。所有者が生きている間であれば、保有株式を計画的に減らすこともできますが、相続開始後の有効策はほとんどないため、生前の相続税対策が重要といえます。

株式の相続税対策には生前贈与が有効なので、誰に・どのタイミングで・どれだけ贈与するか、税理士などの専門家を交えて検討するとよいでしょう。

株の相続税対策には生前贈与が有効

保有株式の減少はそのまま相続財産の減少につながるので、生前贈与は有効な相続税対策になります。株価は常に変動しているため、株価が下がっているタイミングで贈与すると、その後の反発によって資産価値が大きくなる可能性もあります。また、分割しにくい不動産と異なり株式は細分化できるため、複数の相続人がいる場合でも不公平感なく贈与できるでしょう。所有者が生きている間にしかできない相続税対策なので、株式の生前贈与は早めに検討するべきだといえます。

相続税の節税目的で使える生前贈与6つ【相続税対策をするときの注意点と共に解説】

相続時精算課税制度を活用した株式の贈与

まとまった株式の贈与には相続時精算課税制度が効果的な場合もあります。相続時精算課税制度を利用すると最大2,500万円まで非課税贈与できますが、相続が発生した場合には贈与済みの財産を相続財産としてカウントします。相続税の課税対象になるためメリットはなさそうですが、相続税評価額は贈与時の価値で計算されるため、株価が上がった場合に効果的です。一時的に株価が下がっている場合や、将来の値上がりが期待される場合には大きな節税効果があります。

また、2,500万円を超えた部分は一律20%の税率なので、贈与額が大きいほど節税効果も高くなります。60歳以上の父母や祖父母から、18歳以上の子や孫へ贈与する場合に利用できますが、税務署にはあらかじめ届け出をしておく必要があります。

相続時精算課税とは?メリット・デメリットや申告方法・必要書類を解説

自社株の評価額を下げる

会社オーナーの場合、自社株(非上場株式)の評価を下げる節税対策も可能です。配当や利益、簿価純資産を引き下げると株価も下がるため、相続財産としての評価額も低くなります。

類似業種比準方式の計算では、特別配当や記念配当を除外するため、通常配当の比率が少なくなるよう、特別配当などに切り替えておくとよいでしょう。利益を減少させる場合、社員への決算賞与支給、役員の退職金支給、不良在庫処分などの手法があり、簿価純資産の引き下げには不動産購入など資産の組み換えが有効です。以上の手法を実行した上で類似業種比準方式を使えば、株式の評価額をかなり低くできます。

発行会社に非上場株式を譲渡した場合の課税の特例

相続税を支払うために株式を売却する例もありますが、非上場株式は買い手が見つかりにくく、上場株に比べて扱いづらい面があります。このようなケースでは発行会社に買い取ってもらうこともできますが、 譲渡益が出た場合は譲渡所得税に加え、みなし配当課税も発生するので注意してください。みなし配当は他の所得と合算され、最高45.945%の高い税率になりますが、「発行会社に非上場株式を譲渡した場合の課税の特例」を使うと税率は20.42%に下がります。

特例を使う場合は、発行会社へ「みなし配当課税の特例に関する届出書」を提出し、相続開始から3年10カ月以内に譲渡しておく必要があります。税務署への申告も必要なので忘れないようにしましょう。

非上場株式の納税猶予および免除の特例

中小企業の場合、自社の非上場株式に高額な相続税がかけられると会社の存続に影響します。しかし事業の承継者が役員に就任していれば「非上場株式の納税猶予および免除の特例」を利用でき、スムーズに事業承継できる可能性もあります。

特例の利用には様々な条件がありますが、一定条件を満たしながら経営すると半永久的な納税猶予も実現できます。ただし、条件を満たさなくなった場合は相続税の現金一括納付が必要となり、猶予期間の利子税も発生するので注意が必要です。事業承継に詳しい税理士など、専門家のアドバイスを受けながら検討するとよいでしょう。

相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

相続した株を売って利益が出た場合、利益に対して譲渡所得税が課税されます。すでに相続税を納めている場合、さらに税金が発生することになりますが、利益を圧縮できれば譲渡所得税も低くなります。

譲渡所得は「譲渡収入-(取得費+譲渡費用)」で計算しますが、相続開始から一定期間内に株式を売却すると、すでに払った相続税の一部を取得費に加算できます。一定期間とは、相続税の申告・納税期限(相続開始を知った日の翌日から10カ月以内)から3年以内のことを指します。

株を相続したときに行う手続き・必要書類

相続した株式は名義の変更が必要です。後で売却する予定でも、まず相続人名義に変えておかなければなりません。上場株式の場合は証券会社や信託銀行で手続きしますが、事前に相続人名義の口座を開設しておくとスムーズに手続きを進められます。非上場株式は発行会社で手続きします。

また、上場株式の場合は相続発生日の残高証明書も必要となり、遺産分割協議や相続税申告に使うので、証券会社に請求しておくことをおすすめします。名義変更の手続きには次に解説する書類も必要なので、あらかじめ準備しておきましょう。

株の相続手続きに必要な書類

株式を相続する場合は以下の書類が必要です。遺言書の有無を確認し、なければ遺産分割協議書を作成してください。

  • 株式の名義変更請求書(証券会社などの指定様式)
  • 株券(発見された場合)
  • 遺言書または遺産分割協議書
  • 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍、除籍、原戸籍など
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑証明書

証券会社や信託銀行によって提出書類が異なる場合もあるため、あらかじめ電話などで確認しておくとよいでしょう。印鑑証明書は遺産分割協議書に添付しますが、発行日から○カ月以内などの指定もあります。戸籍は株式の名義変更以外にも使うので、必要部数を取り寄せておくことをおすすめします。

なお、公正証書遺言以外の遺言書は家庭裁判所の検認が必要となり、遺産分割協議書には相続人全員の署名捺印(実印)が必要です。

株の相続を放棄したい場合はどうするか

相続放棄すると最初から相続人ではなかったことになり、株式以外の相続財産もすべて放棄することになります。相続放棄する場合は家庭裁判所への申し立てが必要ですが、相続開始を知ってから3カ月以内という期限があります。相続放棄も株の相続もしたくない場合は、遺産分割協議によって株以外の財産だけを取得するよう、他の相続人の同意を得なければなりません。

株を現金化して相続する場合

現金相続したい場合は株を売却することになりますが、相続人の1人がすべての株をまとめて相続し、名義を変更した上で売却する手順になります。現金は株式以上に分割しやすいので、今後、株を保有する予定がない場合は売却もよいでしょう。

株を相続するときの注意点

株券は10年以上前に電子化されているため、前述したように被相続人の保有株式がわからないケースもあります。また株の運用益には所得税もかかるため、確定申告も必要です。株式を相続する場合は次の項目に注意してください。

保有株式がわからない場合は「ほふり」に連絡

被相続人の保有株式は、取引残高証明書や配当計算書など、証券会社からの郵便物である程度把握できます。しかしメール通知の場合は見逃しやすく、パスワードがわからないため調査できない場合もあるでしょう。このようなケースでは、まず「証券保管振替機構」へ連絡してください。通称「ほふり」と呼ばれる機関ですが、登録済加入者情報の開示を請求すると、証券会社や口座を特定できます。開示請求の際には以下の書類が必要なので、早めに準備しておきましょう。

  • 開示請求書
  • 請求者(相続人)の住所・氏名・生年月日がわかる書類(運転免許証など)
  • 被相続人の除籍謄本や相続人の戸籍など(法定相続一覧図でも構いません)
  • 被相続人の住所がわかる書類(戸籍の附票など)
  • 相続人の印鑑証明書

開示請求の手続き概要や、開示請求書の様式は「ほふり」のホームページから入手できます。

開示請求の手続き概要(証券保管振替機構)開示請求書の様式および記入例(証券保管振替機構)

遺産分割が決着していない株式は現金化できない

前述したように、株を売って現金にしたい場合はまず相続人の名義に書き換えておきます。名義の変更には遺言書、または遺産分割協議書が必要となり、「誰が相続人なのか」が決まっていなければ手続きには応じてもらえないので注意してください。

遺産分割とは?しない場合のリスクや遺産分割協議の流れをわかりやすく解説遺産分割協議書の作成方法・例文【遺産分割協議の流れも解説】

被相続人の準確定申告も必要

亡くなった方が特定口座(源泉徴収なし)や一般口座で株式を運用していた場合、所得となる運用益については準確定申告が必要です。相続発生後になるので、本人の代わりに相続人が申告することになりますが、相続発生から4カ月以内が期限となっています。相続発生の時期によっては申告内容も変わるので注意してください。

  • 1月1日~3月15日までに死亡:前年分と本年分の準確定申告書
  • 3月15日~12月31日までに死亡:本年分の準確定申告書

準確定申告とは?期限や申告方法・必要書類をわかりやすく解説

まとめ

相続が発生した場合はすべての財産を調査し、それぞれの評価額も把握する必要があります。しかし額面どおりの現金や預貯金以外は評価が難しく、非上場株式であれば専門家以外が判断するのはほぼ困難といえます。時間をかけて勉強し、自分で評価できたとしても、評価額が正確かどうかの担保もありません。評価を誤ると相続税にも影響するため、最悪の場合は過少申告などのペナルティが科される場合もあります。株式を相続する予定の方、また相続直後の方は、必ず税理士などの専門家へ相談してください。

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