株主優待目当ての一点集中投資が招いた「しくじり体験」 ゴールドオンライン

株主優待目当ての一点集中投資が招いた「しくじり体験」   ゴールドオンライン

今回は、株主優待目当ての一点集中投資が招いたしくじり体験を見ていきます。※本連載は、藤原FP事務所/藤原アセットプランニング合同会社・代表の藤原久敏氏の著書、『現役FPのしくじり体験から学ぶ 月15万円を確実に稼ぐ守りの投資術』(鉄人社)の中から一部を抜粋し、お金の専門家である著者の投資で失敗したしくじり体験から、今後の投資に活かす教訓や対策を見ていきます。 資産運用その他投資藤原 久敏2018.8.23

前回の続きです。今回は、しくじりポイントを見ていきます。

③3単位(300株)買っていたので

ここでのしくじりとは、一つの優待銘柄に、集中して投資してしまったことです。その結果、優待改悪による株価下落の損失を、集中して被ってしまったからです。

私は普段から、リスク分散のため、個別銘柄については、(優待銘柄に限らず)できれば10万円以下、高くても10万円台後半のお手頃な銘柄を選ぶようにしていました。今回のヴィア・ホールディングス(以下、ヴィア)も、最低購入額は10万円前後でした。

しかし、私はそれを3単位(300株)も買ってしまい、結果、合計約30万円(約10万円×3単位)と、一銘柄への投資額としては、それなりの金額となってしまったのでした。

なので、優待改悪による株価下落の影響は大きく、一銘柄で6万円以上の損失を被ってしまったのです。

なぜ、同じ銘柄を複数単位買ってしまったのか・・・その原因は、ヴィアの優待の特徴にありました。

ヴィアの優待は、保有株数が2倍、3倍・・・になれば優待内容も2倍、3倍に・・・と、保有株数に比例して、その優待内容もアップするという、珍しい特徴があったのです。

具体的には、100株保有で年間5000円分、200株保有で年間1万円分、そして300株保有で年間1・5万円分と、保有株数が増えるほど、もらえるお食事券もドンドン増えていくのです(1000株保有〔年間5万円分〕が上限)。

一般的な優待の場合も、保有株数が増えれば優待内容もアップするものですが、通常は500株、1000株など、節目でアップするケースがほとんどです。

ヴィア・ホールディングス、2018年3月以降の株主優待を変更するとの悲しいお知らせが・・・。ヴィア・ホールディングス、2018年3月以降の株主優待を変更するとの悲しいお知らせが・・・。 たとえば𠮷野家なら、100株以上保有で年間6000円分、1000株以上保有で年間 1.2万円分、2000株以上保有で年間2.4万円分となります。

なので、100株保有でも、200株保有でも、900株保有でも、もらえる優待券の金額(年間6000円分)は変わりません。しかも、1000株保有したとしても、保有株数に比例するような内容アップはしないのです(もしも比例するなら、1000株保有で、優待は年間6万円分にもなりますね)。

つまり、一般的な株主優待においては、保有株数は100株(※)のみに留めておくのが、最も効率的ということなのです。

※多くの銘柄では、最低取引単位(≒株主優待の権利を受け取れる最低株数)は100株である。

大きなリスクが伴う、個別銘柄への一点集中

ところが前述のとおり、ヴィアの株主優待は、保有株数に比例してその優待内容がアップするという、非常に珍しいタイプでした。なので、保有株数を100株のみに留めておく理由は、とくにありませんでした。

しかも、優待利回りも程よく高く(5%程度)、近所にお店もあったので(そして美味しい)、私は100株、200株、300株と、ドンドン買い増していったのでした。目指せ1000株・優待年間5万円分と、これからもドンドン買い増していこうかとすら思っておりました。

・・・そこにきて、突然の優待改悪でした。

ちなみに、この改悪(「使用枚数制限なし」が「1000円食事毎に1枚(500円)使用可」と制限付きとなった)と同時に、優待額については2倍にアップしたのです。なので、発表当初は、「総合的に見れば、これは改善ではないのか?」という意見もあったようですが、この発表翌日に株価は2割ほど急落したことから、多くの人は、やはりこれは「改悪」と取ったようでした。

ただ、前述のヴィレヴァンと違って、ヴィアの業績は安定していたことから、今回の改悪を、事前に予想するのは、かなり難しいことでした。なので、この優待改悪を予想できなかったことは、しくじりとは思っておりません。

そうです、繰り返しますが、今回のしくじりは、一つの優待銘柄に集中して投資してしまったことなのです。

株主優待は大いに魅力的ですが、実際にその優待が届くまでは、そして、実際に使ってみるまでは、けっこう不安なものです。実際に手にして、使ってみて、「アレッ?」となることも多々ありますので。

でも逆に、実際に手にして、そして使ってみて、それが素晴らしいモノだと実感すれば(実際、私はヴィアの優待券を使って大満足でした)、その安心感から「買い増し」を検討してみたくなるのが人情というもの。ましてや、ヴィアの優待のように、保有株数に比例して内容がアップするともなれば、これは「買い増し」をしない理由はありませんでした。

しかし、一点集中投資は、とくに個別銘柄への一点集中は、たいへんなリスクを伴います。

今回は、その優待内容もさることながら、「保有株数に比例して、優待内容もアップする」という特徴にも心奪われてしまったことが、しくじり(一つの優待銘柄への集中投資)の要因でした。

「家族名義で保有」という裏ワザにも要注意

ちなみに、「保有株数に比例して、優待内容もアップする」銘柄でなくても、ある『裏ワザ』に気付いてしまうと、魅力的な優待銘柄を、ついつい買い増ししてしまう(一つの優待銘柄に集中投資してしまう)恐れがあります。

その『裏ワザ』とは、家族名義で保有すること。

妻、子供など、家族名義で証券会社に口座を作って、家族一人一人が(最も効率の良い)100株ずつ保有することです。裏ワザというか、優待ファンの間では有名な方法です。

たとえば、𠮷野家を1人で500株保有しても、優待内容は、100株保有時と変わりません(年間6000円分)。しかし、5人家族で、5人がそれぞれ100株ずつ保有すれば、家族全員で年間3万円分もの優待を受け取ることができるのです。

ただこの場合、𠮷野家だけで100万円ほどの投資(株価約2000円×500株)となってしまうので、そこは注意しなければいけません。

もちろん、私もこの裏ワザ(家族名義保有)を使っていますが、家族全員の合計額には気をつけて、一つの銘柄に集中しないよう心がけております。

●まとめ

→株主優待目当てなら、保有株数は100株に留めておくのが効率的

→保有株数に比例して優待内容がアップするケースでは、買い増しのリスクも十分考えること

→家族全員がそれぞれ100株ずつ持てば、そのぶん優待を多く受けることが可能

藤原FP事務所/藤原アセットプランニング合同会社代表 1級FP技能士・CFP

1977年大阪府大阪狭山市生まれ。大阪市立大学文学部哲学科卒業後、尾崎信用金庫を経て独立。資産運用に関する講演・執筆・相談を中心に活動する。マネー関連の著書は、『あやしい投資話に乗ってみた』『10年後に1000万円の差がつくたった3つの考え方』『おトクな制度をやってみた』(彩図社)、『60歳からのお金の増やし方』(スタンダーズ)など20冊超。また、大阪経済法科大学にて経済学部非常勤講師、阪南大学にてキャリアセンター講師を務める。

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